コロンブスのアメリカ大陸発見(1492年)500年祭の大騒ぎを横目に、その意義を批判的に記した大著の文庫化。政治、経済、宗教、芸術の様々な局面で起きていた様々な出来事を「西欧が主導した近代の始まりとしての純潔化」でまとめているすばらしい本です。
それまでは中世的に混沌としていたヨーロッパが、自らを他から分けて定義するために他の政治体制や他の宗教からの「純化」を計っていく。そのなかでコロンブスが間違って発見してしまったアメリカ大陸。分けられていく人々(アジア、アフリカ、南米。イスラム、ユダヤ、インディオ)はヨーロッパの力の源泉である武力によって、排除され、差別され、搾取され、虐殺されていく。そしてそれは現代も続いていると説いています。
そして、排除され、差別されている人々のなかからこそ、ヨーロッパを越える普遍的な思考が芽生え、近代的知識人が誕生していくという「知」への信頼も分かりやすい。特に、当時、急激に迫害されるようになったユダヤ人たちが、キリスト教への改宗を迫られ、表面的に改宗しつつ本当はユダヤ教を信じる姿(マラーノ=豚と呼ばれた)に、一つの価値だけを信じることができないからこそ普遍的なものを求める近代人の苦悩を見ています。このあたり、南米の一人のマラーノの姿を書いたマルコス・アギニスの小説「マラーノの武勲」(作品社、2009年)に詳しいです。