この人は前作もだが、人が失いたくないものや、背負いきれない傷を受けても
捨てきれない望みのために日々の生活を生きる人を描くのが絶妙だ。
今回はプロ野球で活躍していたのにデッドボールをきっかけに引退し
今は便利屋を営む倉沢が主人公。
4部構成の前半は、野球から引退した倉沢が、
人の心をも引きうける便利屋稼業のシリーズかと思わせる。
もちろんその前半もシリーズ化出来そうな面白さではあるが
後半のしかけにこの作家も持ち味が滲み出てくる。
タイトルにもある145gは野球硬式ボールの重さだ。
それは倉沢が見ようとして見れなかったもの、その正体が明かになってくると
人の心の弱さが人を意固地にもするし、孤独にもさせるその切なさが
読んでいる胸に染みてくる。
過去の栄光となりつつなる戻れない時間を、もがきながら折り合いをつけようとする生き方に、最期まで心を揺さ振られる。