オールディーズ的な香しさが一曲目から流れてくる。「TENDER」のゴスペルで、とてもたっぷりとした大きな波の中にリスナーは置かれるのだが、それは同時にBlurのBlurたる所以、偏な小難しさがなく判りやすいメロの良さ、というものを改めて実感することだった。といってもこれはBlurの音楽を象徴するというよりは、その奪還への祝典の儀式のようなもので、2曲目のROCKと3曲目のPOPSとを聴くにあたり、その両方を兼ね備えるBlurらしい安定したメロ、彼らのオリジナリティを確認できる。その一方で前作からの流れで、大いにサイケデリックな音も楽しめる作風になった。
ウィリアム・オービットのプロデュースで感じるのは、音の奥行きや広がりというもの。バンドの自主性を後押しし、彼らの動脈をかっ斬って血の出るままに、つまりBlurの本質性が出るままに作品をまとめていったという。それ自体がある種の実験性といえるのかもしれない。ライナーには彼らの新しい世界観がここに提示されたとあるが、今作はむしろその新しいステップアップへの“予感”を感じさせる位置付けでもいいのではないか。それは「自然な成り行きで、心のままに作ってみた」という言葉や、実際に手探りで方向性を見つけようとしている音を、今作からは感じられるからだ。だがそれでも、今作は一曲一曲魅力的な音に溢れている。Blurのオリジナリティという血の鮮やかさと、その血流がニューサウンドへと向う激しさがここには記されていた。