まずもって、ダニー・ボイル監督の力量は尋常じゃないです。素晴らしい!!本作は、実話を映画化したものです。サバイバル&脱出ドラマですが、登場人物は一人。なおかつ、主人公が一歩も動かないという、これほど変化に乏しい素材を、ダイナミックな娯楽作品にしちゃった!!
そもそもこのストーリーは、「予想外」が起こりにくい。おそらく誰もが予想した通りにしかならない、ならざるをえない。言ってみれば、始まる前から結末が予想できる話なんですよ。脚本上の小細工が一切できないという凄いハンデ。脚本に「意外性」を持たせられない以上、編集や演技力、音楽等で見せ方に工夫するほかはない。工夫の数々、細かい伏線の張り方(冒頭、主人公アーロンが棚の上のある物を探すショットからして心憎い)など、ソツがないです。
分割画面やハイスピード撮影などの映像も音楽や効果音もスタイリッシュであり、また、メチャメチャ「深刻」な状況を描いているにもかかわらず、笑ってしまいたくなるようなユーモアさえ含んでいる。なにより見事なのは、前向きで肯定的なイメージを作り上げたこと。失うことを喪失感なく描いただけでも大したものなのに、それを見るものすべてにフィードバックさせる共感の持たせ方も的確である。人生への前向きなメッセージ。予測不可能な大自然というフィルターを通して、日常生活の中では見えにくい“生への渇望”を、鮮やかな筆致で教えてくれた。
ほぼ一人芝居のジェームズ・フランコが多彩な演技で熱演し、一瞬も飽きさせません。巨岩に右腕を挟まれた“127時間の人生”を見事に演じきった。
彼は、ビデオカメラを“話し相手”として、いわば『遺言』を記録しようとする。(実在のアーロン・ラルソトンが行ったそうだ)
極限状態故に随所で現れる“幻覚”も、アーロンの葛藤を明快に伝え、そのあとにある一種の悟りの境地へと綺麗に導いている。
ところで、彼はその幻想の見える方をデジカメで撮り、その映像を確認して、それが幻想にすぎなかったことを確認します。これは、メディア機器の使い方としてはなかなか面白い。つまり、カメラが「正常な意識」になっている。逆に言えば、アーロンは、このカメラでやっと「正常な意識」を保つのだ。