ジェフリー・ディーヴァーの<リンカーン・ライム>シリーズ第6弾。
今回は、ライムが現在の事件と140年の時空を超えて過去の謎に取り組む。
現在の事件は、ハーレムの高校に通う16才の黒人少女の命を執拗に狙うプロの殺し屋との戦いである。彼は何事に対しても無感覚で、“アベレージ・ジョー”という異名を持ち、目くらましのために無関係の人の命を奪うこともなんとも思わない。しかも、証拠をコントロールすることにも長けているという難敵である。
さらには、血で絵を描く“グラフィティ・キング”という怪しげな元服役囚も絡んでくる。
そこに、少女の先祖が関与した140年前の黒人公民権運動にまつわる謎まで登場し、物語は複雑になり、章を追うごとに緊迫感が増してゆく。
本書もこのシリーズの他の作品と同様、全45の章を通して、常にサプライズがある。私もハラハラ・ドキドキの連続で、思わずどんどんページを捲っていた。
そして、ライムの緻密な鑑識捜査が常に事件の先を読み、「証拠物件一覧表」が埋っていくにしたがって絡み合った謎が次第に明らかになってゆく。注目すべきは140年前の謎も、現代の視点から最先端の技術を用いて捉えている点である。
また、命を狙われ続ける少女、ジェニーヴァの存在も忘れてはならない。少女らしい純粋な心と強靭な折れない意志をあわせ持ち、ライムたちとも十分に渡り合えるほど機転が利く。彼女は、この衝撃的な作品の魅力を一層引き立てている。
本書は、現在の事件と過去の謎の融合という難しい、好奇心をそそる問題にトライして、なおかつ、ディーヴァー最大の持ち味である、“ノンストップ・ジェットコースター・サスペンス”、“どんでん返し”に満ちた、ファンにとってはこたえられない、意欲的な作品である。