公文や100マス式を中心にやってきた人達、またはそれらに関心が強かった人達にとっては、かなり衝撃的な本かもしれません。文章もおおげさに書いてあるところがあります。しかし、考えさせる教育が大切だと当たり前のことを非常に強調しているだけに、逆に本書を驚きとして迎えるとしたら、それこそ現在の学校・家庭が異常な方向に向かっているのかもしれません。
小学校低学年の算数の教え方の潮流は、ここ数十年の間、公文式、100マス計算、さらに向山氏が率いるTOSSや「算数脳」で有名な高濱氏の流れに集約されてきていますが、前者2つは訓練重視なだけに過度に子供に強要すると、どうしても重大な問題が生じます。といって計算力がないと、やはり思考力も出てこないというのも否定できず、程度問題になってしまいます。向山氏・高濱氏も大変有意義な活動をされていますが、本書を読むと、文章問題をどのように攻略するかについては糸山氏に及びません。これら3氏は思考力中心派と言ってもよく、子供の健全な発育を考えると当然主流となるべきですが、これまでの向山氏・高濱氏だけではまだ力不足のようなところがありました。今回、本書の成功により、多少カリスマ性のある糸山氏が加わり、やっと思考派が主流を形成できそうで、内心ほっとしています。といっても、家庭向けの話であり、学校教育の現場での本書の活用は難しいでしょう。一時期のように学校でゆとりや思考中心に偏重すると計算力が落ちてしまい、保護者達は逆に計算力の方へ動いてしまうからです。意外に複雑です。親は目先だけで動くのではなく、遠い先も見据えて動く必要があるでしょう。本書はそのきっかけになりますし、雑多な欠点は多くありますが、独創性も高く、とくに低学年の子供のためには十分役立ちます。