「君と歩いた青春」はのちの再録音のものしか知らなかったため、オリジナルバージョンを聴く目的だけでなんとなく購入してみました。それがびっくり。アルバムに収められた12曲の洗練されたすばらしさに心酔してしまいました。どなたかのレビューにも書かれていましたが、太田裕美の違った魅力を存分に味わうことができます。これまで彼女に対して持っていたイメージはやはり松本*筒美コンビの影響によるところがいかに大きいかが良く分かりました。そして太田裕美という歌手の奥の深さにただ脱帽、むしろ既成のイメージよりはるかに魅力を感じました。それだけになぜもっと早くこのアルバムにめぐり逢えなかったかが悔やまれてなりません。ただ様々な音楽を聴いてきた今の自分にとっても新鮮で、逆に良い意味での「やぼったさ」がたまりません。また曲を提供したユーミン、正やん、イルカ、谷村らにもまだ若々しさが感じられ、それらの楽曲がやはりまだみずみずしい太田裕美の美しい声で歌い上げられているのには一種の芸術としてさえ感じられます。シングル路線ではアイドル視される領域に入ろうとしていた当時に、こんなアルバムを企画された関係者へ今更ながら拍手を送りたいと思います。
どの楽曲もできばえがすばらしく、今と違って当時の歌は詩と曲と歌唱がしっかりしていたものだと改めて感じます。中でも山田パンダのハートフルなメロディ「湘南アフタヌーン」をさらりと歌い流しているのが印象的で、主人公の心情や旅の情景が良く表現されており気に入っています。
とにかくファンでなくても聴いてみる価値は十分あると断言できます。これまで自分の知っている様々なアーティストのアルバムを併せても屈指の名盤といえるでしょう。