ケネディ大統領(JFK)暗殺に引き続く、ロバート・ケネディとキング牧師の暗殺、ベトナム戦争の泥沼化は、アメリカにとって暗い時代だった。「もしJFKが生きていたら」と思う人は多い。
これは、その「もし」がテーマのSFである。
メイン州の高校教師ジェイク・エピングは、JFK暗殺を止めるために、時間の通路をくぐり抜けて1958年に行く。過去を変えることはできるのだが、それが大きな出来事であればあるほど、過去は変えられることをこばむ。数々の困難をくぐり抜けてようやく1963年11月の暗殺日を迎えたジェイクは、胸を引き裂かれる選択をすることになる。
歴史では、リー・オズワルドが単独でケネディを暗殺したことになっているが、CIA、KGB、マフィア、FBI長官の陰謀説は根強く残っている。キングは、みずから歴史をつぶさに検証し、歴史学者に「JFKが生きていた場合の最悪のシナリオ」をたずねて本書を書いたという。
その結果、この本は、ただのSFではなく、暗殺者のリー・オズワルドの人となりや動機にまで踏み込む、優れた歴史小説になっている。
58年から63年までのアメリカがとても魅力的に描かれており、ジンジャービールの描写にむしょうにジンジャービールが飲みたくなり、グレン・ミラーのIn the Moodでスウィングが踊りたくなる。
主人公のヒロイズムさやロマンチックさも、率直に胸を打つ。
864ページという長さにひるむかもしれないが、いったん読み始めると、長さを忘れるので、ぜひ読んでいただきたい作品だ。