この作品以前で彼は、圧倒的な詩と音楽性により独自の世界を構築しました。「犬と猫」「笑顔」「ハレルヤ」名曲を挙げればきりがありません。その作品世界は「彼と彼の視点からみた世界」にほぼ終始しています。
しかし、このアルバムからバンドという形態をとり、明らかな変化を見せ始めました。作詞作曲のほとんどを彼が手がけているとはいえ、当然ながらメンバーの影響を受けます。何かが変わったと思うでしょう。そんな中で一番変化したことは今作品のテーマともいえるコミニケーションです。
トラック2曲目のキャノンボールの冒頭「そんなにさ、しゃべんなくたって、伝わることもあんだろ?」に代表されるように、これまではあまり見られなかった人と人とのコミニケーションの楽しさ、難しさ、辛さ、そして希望を歌いあげています。アルバム内では物語の様に分かり合えない辛さや、共感できる喜びを描き、最終的に「ひとつだけ」に結実されます。「ひとつだけ」では「たとえ、この先どっか、何があるとしても、どうか、歩みさえ止めぬように。」に始まり「ひとつ笑って、ひとつになって、君を少し、知れたようで・・・」で終わります。
このアルバムの傑出した所は、綺麗なものだけを集めたのではない、心の内に秘めたさまざまな思いを詩に書き上げた所です。だからこそ聞いていて、感動したり涙がこぼれるのです。そして中村一義は作品同様に積極的にコミニケーションをとり始めました、その矛先はきちんと僕達にも向けられています。