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17 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
現状認識は正しいけれど・・・,
By ねっとてんぐ (東京都目黒区) - レビューをすべて見る たとえば氏の歴史理論の要である「利子率革命」。ヨーロッパでは13世紀から15世紀にかけて、農業の技術革新などで労働者の実質賃金が上がっていく。その一方人口の減少で封建領主は年貢の増加を見込めない。領地から上がる利潤が極端に低くなってしまったので、金利も下がる。領主たちは封建社会を維持するインセンティブが薄れてしまった。これが封建社会から資本主義経済社会へ転換した根本原因である。氏はこの歴史的事例を現代になぞらえて、90年代日本で始まりいまや世界に広がろうとしている超低金利状態が、資本主義経済に決定的な変化をもたらすだろうという。 中世末期は労働者の実質賃金が上がって豊かになった、ブローデルはこの時代を「労働者の黄金時代」といったというが、果たしてそうだろうか。この歴史観は私たちの常識とはかけ離れている。 まず当時「労働者」と呼べる身分の人々がいただろうか。封建領主は領国に対する「投資」を行っていただろうか。封建領主は軍事費を負担し、宮廷を構え、家来を従え、身分制度を維持したわけだが、それを「事業」という意識で行ったであろうか。そもそも当時損益を計算できるほど複式簿記が普及していただろうか。氏は封建領主を近代の農場経営者と同じように考えているのではないか。 中世末期はペストが流行し、百年戦争と呼ばれるような長い戦争がつづき、農村は疲弊した。とうてい「労働者の黄金時代」であったとは考えられない。むしろ人口減少とそれにともなう生産力の低下が封建領主の経済基盤を破壊したと考えるのが常識的である。「利子率」とか「インセンティブ」とかが出てくる場面ではない。 水野氏は現代の経済理論を、社会構造の違いを無視して過去に単純適用しているように思える。 現在起こっている変化がマクロ規模の大変化であることは確かだと思うが、その分析のためにブローデルやウォーラーステインを引き合いに出すのはいかがなものだろうか。もっともらしく聞こえはするものの、結局「トンデモ説」になっているような気がするのだが。
26 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
経済学の名著になるかも 失われた20年を構造的に解明,
By 「革命的経済学」であり「良くぞ日本で出版された」と敬意を払える内容ぎっ しりの、文庫本化・再発売である。初版は2003年2月に日経から単行本で発売 された。小生は愛読した。日本経済の現状があれよあれよという間に水野氏の理論 (予測)通りに展開していって、現在では欧州まで「デフレ」がカバーしている。 つまり先進国では「緩やかな=優しい(ビナイン)デフレが続くだろう」と言うの である。 日本の「景気回復感なきこの10年」を説明するには的確だし、日銀の政策が誤り ではなかったという総括も可能である。 最近では「ミスター円」の元大蔵財務官・榊原英資氏が著書の中で水野理論を絶賛し、これをベースに 独自のグローバル経済論を繰り広げ、出版される単行本はベストセラーとなっている。も ちろん水野氏の著書も売れてはいるらしいが、現行の「アメリカ経済学」を正面から否定 する内容なので榊原氏ほどは稼いでいないはず。水野氏は地味なのである。 さて、水野理論の骨子とは、現在の世界経済は「デフレ」「インフレ」が混合し「構造変 化した経済」に生まれ変わっていると言う仮説である。水野氏は三菱UFJ証券チーフエ コノミストの現役だが、他の証券エコノミストとは「人種が違う」ようで、経済学者より より学者的である。彼は三菱の豊富な経済データを基にしてプロジェクトチームを組んで 徹底研究。「株式販売の本業」から見れば、デフレを力説して、販売不振にも繋がるよう な理論を構築しいる。これを又、三菱が継続させたのだから「さすが天下の三菱グループ」 として頭が下がる。結局、水野氏は「短期の投機的資本家」を擁護するのではなく「本物 (長期)の資本家」を擁護しているのだろう。
38 人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
最適な入門書,
By
レビュー対象商品: 100年デフレ―21世紀はバブル多発型物価下落の時代 (単行本)
二次資料を集めただけだから星2つ、とのコメントが下記にありますが、私は良書だと思います。そもそも、良い教科書は二次資料に基づいてます。二次資料をどう料理したかがポイントです。その意味で、本書は知的な刺激を与えてくれます。歴史上の最長デフレは約25年です、しかし今度は100年だ、と本書が主張している論拠は、元共産圏諸国が世界システムに組み込まれたこと、その世界システムがインターネットで一体のシステムになったことにあります。この二つの衝撃の規模は、蒸気船、鉄道と電報システムという19世紀後半に生じた衝撃と比較してはるかに規模が大きい、というのが論拠です。残念ながら、規模が大きいことの定量的な比較資料があまり在りません。ですから100年の根拠は薄弱だと??います。しかし、本書がとっているいくつかの視点と予測は当たっているのではないか、と思います。私は元技術者で20年以上技術史と経済史に関心があり、本書が上げている資料もかなり原書で読みました。本書は経済的側面だけで100年デフレを主張していますが、そこまで主張するためには、人類の世界観の変遷と今後の展開に関する検討が不可欠である、というのが読後感です。
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