春の朝、17歳のレナはブリュッセルの鉄道に飛び込んで自殺した。衝動的な行為だったらしく、両親にも12歳の弟バスにも、原因は思い当たらない。遺された家族は時間がたつにつれ、ますます嘆き悲しみ、自分を責め、どうやって生きていけばいいのかわからなくなる。でも、ついに夏のバカンスシーズンがめぐってきて…… 。
この話では自殺の原因が追及されるのではなく、遺族がどうやって悲しみと怒りと自責の念に耐え、また、そんな遺族を学校や友達や隣近所の人たちが、どうサポートしていくかが、ヤングアダルト向けの平易な言葉で綴られている。
大好きだった姉の死を受け入れられず、なぜか陽気に振る舞ったり、突然怒り出したりして、自分をコントロールできなくなる弟バスの姿はあまりにも痛々しい。でも、バスも両親も、次第にいつでもどこでも大泣きするようになってくる。「泣くのは心によいことだ」という、隣のおじいさんの言葉が胸にしみてきた。泣きながら愛する人のことを語れるようになって、初めて傷はゆっくりと癒されていくのだろう。
また、この本では、真の個人主義が確立された国と、日本との違いも思い知らされた。日本では原因がなんであれ、子どもの自殺は「心の闇」という言葉で一括され、「命の大切さ」を教えなければ、という方向へ行きがちだが、この本のベルギーの校長先生は「つらいことだが、私たちはレナのとった行動をできるだけ尊重してあげるべきでしょう」と生徒に語りかけ、バスのクラスでは何度も、レナの死について話し合いがなされているのだ。
自殺者が交通事故の死者の三倍を軽く超えている今の日本では、遺族の数も莫大だろう。そういう意味でも、すべての人に読んでもらいたい本だと思う。