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「インセイン(正気じゃない!)」と同僚に言われながらも著者が決断したのは、「クレディビリティ(信義、信頼、信用)」のためだったという。当時からオンライン証券会社設立を決意しており、もしそのままお金のために会社に残って不本意な仕事を続けたとして、「そんなことをしている人間が、果たして金融人としてのクレディビリティを維持できるのか、人がついて来てくれるのか」と考えたという。このエピソードから著者は、ビジネス社会で生きていくためにはクレディビリティが何より大切なこと、今日やることを明日やっても価値は割り引かれること、「時間軸」や「時価会計」の発想で行動すべきことなどを説いている。莫大な報酬を自ら断っているだけに説得力は抜群だ。
著者の「仕事術」は、こうしたビジネスパーソンとしての価値や行動規範といった、だれもが迷いがちなテーマに深く切り込んでいる。「自己肯定」「矜持」「倫理観」などの、悩む心を支えるアドバイスも貴重である。
一方、実践的な面ではコミュニケーションや情報収集、自分を高める方法なども幅広く紹介している。平易な表現ながら、「期待値」「エクイティ」「アセット」などの著者ならではの視点が楽しませてくれる。(棚上 勉)
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彼が何よりも大切にしているのが、何度も出てくる「クレディビリティ」ということ。日本語にすると「信用、信頼」という意味になります。人を説得する際も、人が自分を助けてくれるかどうかも、すべてこのクレディビリティにかかってくる。それを身につけるためには「裏切らない」「嘘をつかない」「できない仕事をできると言わない」などの当たり前に思えるようなことをこなしていくことが必要だと説いています。信頼というのは、彼が言うように築き上げるのは大変だけど、崩れるのは一瞬で崩れる。そうなることで、自分の自信も失いかねない。だから、一見当たり前に思えることをこなすのは大切だと彼は言うんですね。
その他に彼が強調しているのは好奇心。仕事する上では、大量の情報に触れることが大切だと彼は言います。そうすることで、情報を見分ける目が肥え、判断の間違いを少なくし、情報全体のパースペクティブを捉えることができると言っています。また、大量の情報に触れることで、法則性を発見することができ、例外を見つけることができると言っています。その例として面白かったのが、テレビなどで見るヒヨコのオスとメスを次々と分けていく人の例。ああいう感じで感覚的に気付けるようになると言っています。ただし、現代のように、多くの人がインターネットを自由に使える環境においては、情報源はほとんどの人に平等に与えられると言えます。そのような状況で、大切な要素が「好奇心」です。好奇心があることで、情報に対する感度が高まり、効果的に必要な情報を得ることができると彼は言います。
本書を読むとわかると思いますが、松本氏が心がけているのは、たとえ同じ仕事であっても、常に自分の中で明確な意図を持って取り組んでいること。仮にアウトプットが同じだとしても、その仕事にどう取り組んだか、そこから何を得たのかということを繰り返し考えていけば、たった数回では差が出なくても、それを何年も続けていくことで、大きな差が生まれるのかもしれないなと思いました。
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