日経ビジネス
アメリカの株高はバブルだ、と言う人が多い。しかも、もうじき破裂するという。素人が仕事もしないで毎日インターネットで売買を繰り返し、それを「デイ・トレーダー」などと呼んで持ち上げてきたが、ついに損をしたデイ・トレーダーが銃を乱射する事件を起こした。この事件はバブル末期を連想させるというのである。
何となく納得してしまいそうだが、よく考えると、アメリカの企業がどう変わったのか、どこから資金が流れ込むのか、といったことを何も知らない。知っているのは、ダウ平均が10年で約5倍近くになったことくらいだ。それだけで感覚的に判断するのはいかがなものか、というわけでアメリカ株式投資の実践書である本書を覗いてみた。
著者は「アメリカ株式は、割高ではあっても、決してバブルではない」と言う。バブルは、1上がるから買う、買うから上がるというスパイラル的上昇過程2その結果引き起こされる実体価値もしくは使用価値からの乖離──この2つが大きな特徴だが、「アメリカの株にはまだスパイラル的上昇過程は起きていない」のだそうだ。公定歩合を上げればダウ平均は下がるし、企業の業績もキャッシュフローで判断されているし、所有不動産の価値も収益還元法で評価されているという。
一方、アメリカ株バブル説の人々は、インターネット関連企業の株の高騰をバブルの証拠として挙げる。赤字だらけの企業の株価が瞬く間に上昇している。それこそユーフォリアではないかというわけだ。この点は、本書の第8章「実態空間から仮想空間へ」、第9章「インターネット・ストック」で詳しく論じている。結論は成長への期待が高く、それが株価となって表れているので、バブルではないとのこと。実際にヤフーは期待通り飛躍的なキャッシュフローの増大が始まったとしている。
著者は、ニューヨークに在住し「Benkei USA」というアメリカ株式投資についてのニュースレターを会員に発行し、ファンドも運営している。それだけに企業分析の手法など、非常に面白い。ただし本書は個別株投資の実践編なので、分析や投資手法の説明は、昨年出版された入門編『1,000ドルから本気でやるアメリカ株式投資』の方が分かりやすい。
ところで著者は、日本企業の株は怖くて買えないと言う。アメリカの企業は分析に必要な企業情報がオープンになっているが、日本企業については信頼できる正確な情報が得られないからだそうだ。だとすると、今年になって急に上がり始めた日本株の方がミニバブルの危険があるのかも知れない。
(ジャーナリスト 野口 均)
(日経ビジネス1999/8/23号 Copyright©日経BP社.All rights reserved.)