はっきり言って、ムズカシイ。設問をやり遂げるには、相当にアタマを使うことでしょう。前作に比べ「実践編」と銘打つだけあって、書く上で必要なことは何かを考えながら、地道にこなしていく忍耐力が必要です。個人的には正直、しんどかった。短編小説の基本が系統立てて整理されているので、今後は参考書代わりに使おうと思います。
「小説を書くなら……」というタイトルですが、読み手として小説を楽しむ人にも興味深い内容だと思います。山本周五郎の『さぶ』を始め、多くの名作に施された巨匠のテクニックが具体的に示されていくのですが、その中で奈良氏は書いています。
「耳をすませなさい……聞こえませんか。(略)白い紙に、黒いインクで記された『文字』から、八十年の時を超えた声が……。」
細かい分析を読みすすめていくうちに、作中人物の体温がよりリアルに感じられるようになり、さらにはその作者の息遣いまでもが迫ってきます。『さぶ』は十年以上前から大好きな作品でしたが、本書を読み、いままで気づかなかった文体の美しさ、物語の見事さに改めて目をみはりました。ガルシア・マルケスのエピソードは感動的ですらあります。「小説」にこだわり、徹底的に考え尽くして書かれた本といえるでしょう。
同時に「小説を書くために、小説のことだけを考えていたのではダメです」と言いきる姿勢が印象に残りました。結局のところ「小説」という媒体を通して垣間見える、懸命に生きる人間という存在そのものを、まるごと奈良氏は愛しているのだと思います。
この本で、私は「書くこと」そして「読むこと」がますます好きになりました。