O・ヘンリの短編集は新潮・岩波ほかで既に刊行されているので、後発のこの本は何を特徴としているのかが閲覧者の関心事と思います。
まず第一に、訳文が新しく、読みやすいということが挙げられます。海外ミステリの翻訳で知られる芹澤さんの訳は簡潔かつ明瞭で、内容によく合っており、現代の読者にフィットするでしょう。
そして、第二には一冊の「編み方」が挙げられます。O・ヘンリの作品の量は膨大で、必然的にどの文庫も短編選となるのですが、この本はその他のものに比べ、短編の選択と順番にこだわっているように感じます。
最初に「多忙な仲買人のロマンス」「献立表の春」など、比較的知られており、明るい作品を入れ、中途に「意中の人」「靴」など、あまり知られていない話を含め、そして最後の部分に「最後の一葉」「賢者の贈り物」などの代表的な傑作を集めるなど、彼の作品を読んだことがある人にもない人にも効果的にアピールできる編み方になっています。
読み終えたあと、「賢者の贈り物」を最後に持ってきたことに感嘆しました。この作品はO・ヘンリ自身の心情がよく表れた、あたたかな語りで締めくくられ、あたかもこの一冊すべての話を締めくくっているかのように感じられるからです。
解説も充実しており、O・ヘンリをよく知ることのできる一冊だと思います。気軽に読めるのでお薦めします。
ちなみに私は「二十年後」が最も好きです。