本作が発表された’83年は、“スター・ウォーズ”、“スーパーマン”、そして007の三大(?)人気シリーズが同時公開され、また初代007のショーン・コネリーが、番外篇“ネバーセイ・ネバーアゲイン”でボンド役に返り咲いた、正に激動の年。 その危機迫る状況が奏功し、本作は本家007の新作に相応しい傑作に仕上がりました。 注目のプレタイトルは、小型ジェット機アクロスターと対空ミサイルとの激烈ドッグファイトで、ロジャー・シリーズでは名作“私を愛したスパイ”のそれに次ぐ出来映え。 インド密林で繰り広げられる冗漫なアクションや、やり過ぎ傾向のドタバタ系ジョークが散見されるなど、その辺りが評価を下げている感は確かに否めませんが、舞台を欧州に移して、陰謀を乗せて疾走する列車にボンドが文字通り飛びついてからは、列車同様映画も一気に加速します! “ロシアより愛をこめて”の呪縛から脱した列車を立体的に活用したアクションは白眉ですし、クライマックスを飾る飛行機上での格闘シーンも、当時、劇場全体が思わず息をのんだほどの迫力。お約束のラストのラブシーンもロジャー・シリーズ最高のかっこよさです。
ロジャーの実年齢問題が俄に表面化した作品でもありますが、それを補って余りある名演の数々がそれを忘れさせてくれます。宝石オークション会場での微妙な駆引きや、ヒロインであるオクトパシーの唇を強引に奪う力強いボンド像の確立、そして畢生とも言うべきなのが、真の大物悪役、ソ連タカ派将軍と対峙するシーンです。 自らの狂気のプランを陶酔しながら語る将軍に対して、徐々に怒りを露にするロジャーの熱演は必見です! かつてのスペクターの作戦室を彷彿とさせるソ連クレムリン内の会議室のセットも圧巻で、コネリーにも興行的に圧勝した本作は、お薦めの逸品です!