007シリーズ史上、何度も繰り返されている、シリアス路線と荒唐無稽路線の間での往来だが、本作は“神秘の国・ニッポン”を舞台にし、その叙情的な美しさを描出する一方でトンチンカンな世界が展開されたせいもあって、フルパワーで荒唐無稽の方へと全力疾走してしまった作品である。『オースティン・パワーズ』シリーズなど、以降の作品に与えた影響も大きい。大体において、あんなデカい秘密基地のセットを実際にパインウッド撮影所に組み立て、もとい、建設(!)してしまうところなんざ、男らしいというかなんというか、絶句しつつも惚れ惚れしてしまうわけである。そんな、男気たっぷりの愛すべき怪作が、美しい画質、迫力ある音響で楽しめるのはうれしいことだ。
日本側メインキャストの3名―吹替の声は全員別の人が担当しているが、違和感は少ない―は、けっこうきちんとした扱い。その点においては既に『ラスト サムライ』並みの待遇であったと思う。ほぼ出ずっぱりの丹波ちゃんはカッコよく、若林映子さんも浜美枝さんも魅力たっぷり。「どちらかひとり選べ」と言われたら、相当に悩んでしまうことだろう。実際、今回リリースされた分のジャケットには浜美枝さんが登場しているが、特典ディスクの表面には若林映子さんがプリントされており、みんな思うところは同じ、ということが伝わってくる。
その映子さんが、以前、映画雑誌のインタビューで「この映画のDVDのため、3人そろってインタビューを受ける予定だった」と語っておられたのだが、確かに、それに類するものはどこにも入っていない(もう実現しないことを考えると、実に残念…)。しかしながら、映像特典には興味深いものが多く、ドラマ仕立てでマネーペニーやQも登場する、本作までのハイライトを集めた特番「日本へようこそ、ミスター・ボンド」、ヅラを外してリラックスするコネリーのオフショットなど、見どころたっぷりだ。