2002年の『ミステリを書く! 10のステップ』の改訂版だそうだ。創作講座の教科書らしい。やたら文章が多いのだが、実例分析などがページを喰っており、どうにも。「キャラ」だの、「ペニーオークション」だの、やたら最新の言葉使いや話題を盛り込んでいるのだが、なんとも薄ら寒い。自我と自己の違いみたいなオリジナルの話がないではないが、それとストーリー展開とどうつながるのか、など、未消化の部分も多い。あとはやたらミステリの有名どころや関連資料の話。
おそらく、この著者、熱烈なミステリファンで、生徒が書いた実際の作品に対しては、的確に助言ができるのだろう。つまり、読み手としては勘所がわかっているようだ。ところが、書き手としては、その小説を読んだことはないが、この本を読むだけでも、残念ながら、あきらかに文才がない。いや、悪くは無いのだが、冗長な一発書きで、推敲や校正のような、もの書きの基礎訓練ができていない。だから、話はあちこちにながれてしまうし、読者は視野からこぼれてしまうし、胸を打ち抜くような、ズドンっ! という「言葉」がどこにもない。いくら太字にしたって、きちんと読者と目を合わせていないと、心に響かないものは響かないんだよ。
言い方は変だが、サリエリのようなもの。如才なく本は書けるのに、言葉に重みがでない。だから、全体が、緻密なミステリや、崇高なミステリのための書き方とは似ても似つかないライトノヴェルの書き方ような安っぽさになってしまう。初歩としては、まちがったことは書かれていないから、書いてあるとおりにすれば、たしかに練習にはなるだろう。だが、そこからの一歩が、ここには無い。ひょっとすると、実際の自分の作品を持っていて直接に助言を聞いたら、名伯楽かもしれないのだが。