本作の初見時(80年代)の印象はいまひとつだった…。『死』に対する変質的な興味を強く感じたが…問題はそこではなかったと思う。
他の理由はわからないまま…結局以後グリーナウェイの映画を観ることはなかった。
だが、最近『コックと泥棒、その妻と愛人』 を観るとこれが面白い。 早速本作も見直してみたいと思ったところにこのブルーレイが出た。
この映画の概要は、交通事故で同時に妻を亡くした双子の動物学者の奇怪な物語、といったところ。(双子のモデルはブラザーズクエイだという)
だが、この物語をストレートに描くこと(例えば兄弟の悲劇とか…)が狙いだったかといえば…怪しいと思う。
その点、このソフトにはグリーナウェイ自身による解説(6分程度)がついていてなかなか参考になった。 監督によれば、本作で『象徴主義や隠喩』を試みたとのこと。 そして本作には三つの柱があるという。 それは 『双子(しかも結合双生児)』 『自然史への興味(そして死)』 『光(照明)』
なるほど…とは思う。 が、まだわかりにくい…。
まず、すぐに目を引くのは映像的な特徴。 監督の言うところの『光(照明)』
フェルメールを意識した(と監督自身が語っている)という美しい画面。 複雑で人工美に満ちた照明が全編に展開される。 露骨に絵画の映像化を行っている部分も随所にあり見所だ。
(このソフトの画質は相当美しい。監督が試みた人工美に満ちた映像が楽しめる。ほぼ無修正であるのもポイント)
もう一つの映像的な特徴はシンメトリー。 これは『双子(しかも結合双生児)』に繋がるのだろう。 それを強調した不自然な構図。 緊張感の強い神経質な印象が強い。 病的なまでの対称性に対する妄想。 …片足が無くなったゴリラ。 …結合双生児のイメージ(終盤双子はランニングでも背広でも横にくっついて過ごす)。
次に目を引くのは、死と腐敗。 『自然史への興味(そして死)』。 心を病んだ双子の動物学者の奇怪な研究は破滅まで突き進む。随所に突然挿入される腐敗にかんするコマ撮りフィルムが印象的。(本作は大変美しい映画ですが、同時にグロ映像注意でもあります)
本作は、普通の意味で物語を観るカタルシスは少なく、むしろ知性に暴力を振るわれているような印象をうける。(→だから初見のとき印象が悪かったのかもしれない) だが、こんな風に映画を取り扱う監督は始めてだ。 …不快だが興味をもった(←つまり面白いってことです)。
まさにグリーナウェイのオブセッションが生み出した‘奇怪で醜悪で憎たらしく、が大変優雅でセンスのよい悪趣味’な作品だ。(ココにも対称性が…)それが趣味に合うかが、楽しめるかどうかの分かれ目かもしれない。
また、新しい迷宮(娯楽)を見付けた…。
『この映画を誤解するな』 『心配ない。時間をかけ、じっくり理解したい』