「UN-GO」という作品に少しでも触れたのなら、ぜひともこの小説を読んで欲しいです。
私自身、劇場版の「因果論」は未見だったので、パッケージの発売の前にストーリーを把握しておくという軽い考えでした。
ところが、何と引き込まれることか。
「探偵」の過去と現在の事件を交差し、本放送に至るまでの状況の推移や、心境の変化を描き、TVシリーズでは提示されていなかった作中の細かい背景が丁寧に描写され、補完を完璧な物としています。
絡み合う、各人の思いと行動。
それらをラストに至るまでに纏め上げ、さらにTVシリーズに繋がる骨格を作り出しています。
作品を纏める脚本家としての會川昇氏の力と、丁寧かつ徹底した描写の、小説家としての力が見事に溶けあった最高の一品です。
顔も知らない他人からの、賞賛や批判という干渉。
ネット社会が生み出した恐ろしさや滑稽さの一つが、科学技術が現代以上に発達した近未来の世界で描かれています。
作中で海勝麟六が語る「真実」が、情報が簡単に捻じ曲げられてしまう現代を。
結城新十郎が追い求める「真実」が、それに対しての氏の考えのように思えました。
この小説をただのノベライズと呼ぶには、余りにも面白すぎます。
著者の思想を散りばめながらも、先を読ませない展開と構成は、紛れもなく推理小説です。
「戦後」を経た復興へと繋がる前日譚。
ぜひ一読を。