本田美奈子さんが38歳の若さで、急性骨髄性白血病で急逝されてからついに3年が経過しようとしている。私は、彼女の生前にはあまり熱心なファンではなく、なぜか漫然と遠くから眺めていただけで時を過ごしてしまったが、突然の悲報に接して、あまりのことに気持ちの整理が出来ず、彼女の歌をやっと本格的に聴き始めたのはやっと最近のこと。
彼女の生前からの熱心なファンの皆様とは逆に、クラシック→ミュージカル→ロック→ポップスへと聴き進んで、彼女の歌に対する情熱と誠実さ、歌唱力の高さ、情感のこまやかさ、それに何にも増してその美しく、力強く、可憐で愛らしい歌声の魅力で、今ごろになって急速に彼女のファンになってしまった。特に今さらに驚くのは、まずアイドルと言われた時代からすでに難曲を堂々と歌いこなすポテンシャルの高い歌唱力を身につけていたこと、それにロックからクラシックまで、幅広いジャンルのすべてに対して、それぞれにふさわしい歌唱法を発揮していたことで、歌手・本田美奈子の天才的な実力のほどを改めて見せつけられる思いがした。改めて惜しんでも余りある人を失ってしまったものと思うが、これほどの美しい天才歌手だったからこそ、早く天に召されてしまったのかも知れないが。
彼女のポップス時代のベストアルバムは、2000年前後から今日まで数点が発表されているが、このアルバムは1998年発売の2枚組みで全30曲収録の、ベスト盤としては最大級の作品で、彼女のアイドル・ポップス時代の曲をほぼ網羅していて、特に“If…”、“Sneak Away”、“マンハッタンの蛍”、“November Snow”、“マリオネットの憂鬱”など9曲は、他のベスト盤には収録されていないものなので価値が高い。個人的には(これは他のベスト盤にも収録されているが)“The Cross(愛の十字架)”、“7th Bird”が特に秀逸と思う。
幻想的なジャケット写真が印象的だが、これも含めて、この商品には彼女の写真は1枚も収録されていない。
どんなアーティストのものでもそうだが、デビュー当時からの熱心なファンの方々にとっては、とかく“ベスト盤”というものは評価の低いもの−−すでにすべての作品を揃えている方には当然のこと−−だが、私のように、遅れて今ごろになってファンになった立場のものには、こうしたベスト盤の内容もまた新鮮で、その存在はありがたいものである。とにかく、今は帰らぬ本田美奈子さんの作品をもっともっと聴いていたい想いがつのるが、私と同じような気持ちの方には、ぜひ一聴をお勧めしたい。
本田美奈子さん、たくさんのすばらしい優しさと愛情のこもった歌をありがとう。心を込めて。