愛情たっぷりに周りから守り育てられてきた、人づきあいの苦手な内向的な女の子が、ある事件をきっかけに自分には特別な力があると気づき…
…と、あらすじだけ追いかけるとまるでRPGのようで非常にティピカル(典型的/ベタ)。
また、深行と雪政という二人の男性はかなり女性好みにキャラ立ちしていて(それが悪いわけではないが)一見普遍的に誰もが惹かれる要素はむしろ薄いように思える。
なのに、それなのに、読み出したら止まらない。不思議な魅力のある作品。
その秘密がどこにあるのかと言えば、日常が非日常に変わる境目をきわめて巧妙に描いているからだと思う。
家と学校の往復だけで、街に出たことすらない子が旅行で東京に行くとなれば、何かが起こることは想像がつくが、そこで非日常がじわじわと侵食してくるさまは読者の予想の斜め上を行く。
著者の代表作・勾玉三部作と比べると、ビルドゥングスロマン(成長小説)であるところは似ているが、ストーリーテリングや群像劇の比重が強い勾玉シリーズに比べて、主人公の心情に寄り添った心理描写や伝奇的リアリティの描写に重きを置いている。
本巻「はじめてのお使い」は導入ストーリーのように解する方もいらっしゃるようだが、本作単独で読んでも非常に魅力的な作品である。お薦め。