雑誌に「レゾナンス」というマンガを連載中の漫画家永井 力が自分が描いたマンガの世界に巻き込まれる、という話しです。
と、これだけ書くとなかなか伝わりにくいとは思いますが、非常に手の込んだ巻き込まれ方をしますので、臨場感があり、たしかに良くある話しかもしれませんが、説得力があります。細部にこだわりがあることでかなり異質な世界観を受け手にすんなり飲み込ませてくれます。いわゆる普通の主人公に敵役、助っ人に鍵を握るイノセンスな人物など、ある意味非常に使い古されたキャラクターを用いることで似たような設定だというどこか安心感を生みつつ、しかし展開が早くてしかも不安感を煽る手法を繰り返し挟むことで独特の臨場感があります。
変な話しですが、ある意味哲学的な「今感じているこの現実は本当に現実なのか?私の頭の中にだけ存在するリアリティなのではないのか?」という恐怖感をしつように煽ってきてとても映画的な、テーマであると思います。しかも実はまさに「私のリアル」を証明出来る術を私たちは誰も持っていないとも言える事実に気がつかせる非常に上手い構成を畳みかけてきます。そこを補完するのは、エヴァの人類補完計画にも似た(というかこちらが多分先)無名教という仮面の教祖を登場させて、欺瞞に満ちた解決策ではありますが、陥りがちな手段を用いる側を対決するのは側に持ってくるのがまた上手いです。
自分が創りだした世界に巻き込まれる、というのも面白いモチーフだと思います。ある意味すべての創造者なのに、決して思い通りにならないし、キャラクターたちからすれば受け入れがたい様々な『ドラマ』を生み出している元凶でもあることになり、しかし今はほぼ対等の関係でしかない、というのも面白いです。
恐らく、最後の方ではさらに複雑な伏線(さらに以前の作品に、おそらくその先である自身の心の中へも見据えていたのではないでしょうか?)を張りつつ、緊張感を持って継続して行こうとした矢先の廃刊だったのではないでしょうか?だからこそ残念ですが、その最後に付け加えた、わずか数ページでの終わらせ方のいメタ構造がさらに読者の底を抜かせる展開でして、そこも見事です。
現実が溶解していく、そんな感覚を面白いと思える方にオススメ致します。