僕個人としては大変楽しめた一冊です。
というのも、ぼくは大学の専門の一つとして時計遺伝子の勉強をしているところだったので、その分野の歴史的な見解の変遷や逆に最新のトピックも含めた考察などはとても興味深く、飽きの来ない内容ではありました。
実は、この時間生物学という分野はバクテリアなどにも共通する分子機構としてほとんどの生物で保存されている影響力の大きい研究テーマですが、とても新しいジャンルであり、まだまだ未解明の領域ばかりです。
この数年でものすごく多くの論文も出されています。
ただこの本は形態としては、もともとはNHKの番組企画からの一冊ということなのですが(もちろん僕も見てましたが)、TVでの内容よりも一般素人には難解なのではないかというところがありました。
おそらく、遺伝子という概念が日本ではあまり理解されていないのが根本的な原因だとおもわれます(下の方のコメントを見ればそれがよくわかると思いますが)。ただ、それだけではなく、概念に対するグラフや図を多用するのに対してはとてもわかりやすい一方、分子や実在するモノの動きに関するグラフや図が足りないことも原因の一つではないかと思います。とくにホルモンや体内物質がどういう物質でどこに存在するものなのかについてイメージしやすくなればなぁと思いました。
以上のことはありますが、今とてもホットな科学分野を最先端の情報も含めてかなり解り易くは書かれています。
(ちなみにこの分野での他の本のほとんどが難解かつ分厚いものばかりで、一般の方にはとっつきにくい分野になってるように思われます。唯一の例外は粂先生の「時間の分子生物学/講談社現代新書」くらいです。)
それだけでなく、最後の章なんかは哲学的というか、考えさせられる部分も多く、本の厚さに対してはとても充実している内容です。
個人的には表紙のデザインも好きです。
科学に少しでも携わってる方は読んで損はないと思います。
ちなみに優生学がアメリカでも考えられていたというのとアメリカのバイオ工学の隆盛は全く関係ないです。そのことは有名なワトソンの「DNA」を読めばわかります。
それと、遺伝子がたんぱく質の設計図だからこそ時計遺伝子は時計たんぱく質を通して体内を制御してると考えるべきです。