毎日新聞記者である澤田氏が「手元に常備するハンドブック的テキスト」が欲しくなり、若手研究者である礒崎氏を引きずり込んで本書を作ったと記述しているだけに、北朝鮮理解のための基本的事項がほどよく網羅されている好著である。用語説明、関連年表、参考文献なども役立つ。「 金正日は無能なのか」「なぜ中国は北朝鮮をかばうのか」などの章立ては、読者ニーズをよく取り込んでいると思う。
北朝鮮はその閉鎖的体制から内部構造が把握しにくいうえ、ともすればメディア報道が情緒的になりがちな面もある。ファクトから考察を積み上げていこうとする冷静な分析手法は大いに評価できる。
ただ、あえて難点を言わせてもらえば、わかりやすさを狙ったという「ですます」調講義録スタイルは脱線も多く、かえっていらいらさせられる面もある。もっと論理的な流れに編集したほうがよかったのではないか。また、澤田氏は自身がスクープした金正恩スイス留学のエピソードに再三触れているが、本書を「ハンドブック的テキスト」とするのであれば、そうした部分は最小限に抑えたほうがよかったように思う。書きたかった心情はわかるが、何か自慢しているようでやや鼻についた。