角川文庫のKadokawa Art Selectionの存在を「ゴッホ」の前に刊行された「黒澤明」で知りました。文庫サイズの画集はカフェやお手洗いで気負いなくフレンドリーに絵画に接することができて光文社古典新訳文庫に次ぐ素敵な企画だとしみじみ思います。さて黒澤氏の絵コンテ集のように文章は解説が添えられる程度と高をくくって紐解きましたら、こちらは文章の比率の方が多く、今回初めてゴッホの人物像や生涯を知るに及びました。ゴッホがほかの画家と一線を画している要素のひとつは膨大な手紙を残していることです(近年刊行された書簡全集は全15巻!)。生涯のそれぞれの転機でゴッホは何を感じ考えたのか。それがどう作品に結びついたのか。自筆の手紙により明らかにされているのです。文字情報のない絵画からは解釈(想像)もつかない「芸術家とは何だ?」「芸術家の生き様」が詳らかにされている本書はとても興味深いものでした。