当たり前のことだが、どのような指標も、
値動きの結果を加工して統計的な偏りを見えやすくし、
「今後どちらに動く確率が高いか」を判断するための道具である。
未来の価格を教えてくれる「水晶玉」では決してない。
一目均衡表は、いくつかの期間の高安の半値を線で結び、
一部を前にズラして重ねただけの「半値の多重表示」だ。
これらの線は目先の抵抗線や支持線としてよく機能するもので、
上手に活用すればエッジ(確率的優位性)を利かせたトレードが出来る。
ただし、これはどのテクニカル指標にも言えることで、
一目均衡表だけが特に優れているわけではない。
所詮は過去の値動きの結果を加工したものなのだから、
この点で他のテクニカル指標と何ら違わないことを知っておくべきだ。
『世界で唯一、将来の価格を予測できる』という本書の売り文句は、
この点で非常にミスリーディングであり、タチが悪いと思う。
どれだけ精密に計算したって正確な予測なんぞ出来はしないし、出来る必要もない。
なら後はエッジの問題なのだから、使い方の基本は他の指標と同じということになる。
著者の福永氏は、解説の分かりやすさ・読みやすさで定評のある
テクニカル分析のエキスパートで、それは本書でも変わらない。
見た目のゴチャゴチャ感から初心者が敬遠しがちな一目均衡表を、
やわらかい文体でやさしく解説してくれている。
それでも値幅観測論だけは手を動かしながらでないと理解しにくいが、
その労さえいとわなければ、誰でも必ず理解できるはずだ。
(これに限らず、手を動かすことは理解の助けになる。オススメ!)
1つケチをつけるとすれば、章の節目ごとにやたら一目均衡表を
ヨイショする文言が出て来るところだろうか(「凄い」「奥が深い」など)。
そういった感想は読者がそれぞれに感じるものであり、押し付けるものではない。
監修者として登場する三世一目山人に気を使ってのことかもしれないが、
かえって本書の客観性や信頼性を損ねているように思う。
本書の最大の特徴は、この監修者が所々で登場すること。
一目均衡表の考案者である一目山人の孫だそうな。
読んでみれば分かるが、この御仁、非常にエラソーである。
この人の著書を読んだ時にも思ったが、なぜこんなに「上から」なのだろう。
祖父の偉業を誇るのは構わないが、それも行きすぎれば気持ち悪いだけだ。
今どき「三世」などと名乗っているのも、いかにも大袈裟で胡散臭い。
言っちゃ悪いが、所詮は相場研究家である。
架空世界の大泥棒や伝統芸能の家元ならともかく、
テクニカル指標考案者の血を引いていることに大した意味はない。
とまぁ、1つと言いつつ色々とケチをつけたが、
内容は(監修者の言も含め)非常に充実している。
ツールとして一目均衡表を使うだけなら、これ以上は要らないと思う。