BoP(Base of the Economic Pyramid)。年間所得3000ドル未満の世帯を指し、世界に約40億人存在する。本書はそのBoP層へのビジネス戦略を先行事例を基に体系的に解説している。取り上げられている事例は既に他書や記事で既知のものが多いが、現時点で本書ほど体系的かつコンパクトに低所得層へのビジネス・アプローチをまとめているものはないのではないだろうか。
BoP層が大半を占める新興国や途上国では、社会インフラはなく、企業やブランドの認知もゼロ、教育の遅れ、貧困、現地環境への影響、NGOなどのステークホルダーの考慮など、様々な課題をトータルかつロングタームで考え、継続性のあるビジネスを構築する必要がある。しかし、先進国での需要拡大が見込めない中、40億人というポテンシャルを持ち、やがて、10年後には、5〜10億人の所得中間層へのシフトが見込まれる市場である。また、ここで開発されたビジネス・モデルを先進国へ逆展開するリバース・イノベーションという戦略もとり得る。こうした観点から、事例として取り上げられている欧米企業や韓国企業はいち早くBoPビジネスに着手し、新興国での高い売上率を既に確保している。
本書の中でとりわけ参考になると思ったのは、第2章の最終節で語られているチェックリストである。BoPビジネスに成功するためのノウハウが簡潔にまとめられている。
・現地の社会問題(MDGsで定義されている8つのグロバール・イシューなど)を解決する性能・品質を備えていること
・デザイン面では、直感で理解できること、現地生産保守ができること、現地に適正な技術レベルであること
・現地で受け入れられ、現地サプライヤーの利益が確保でき、継続性を維持できる価格設定であること
・先進国での考え方をゼロにして、現地のニーズを徹底的に理解すること
・現地やステークホルダーへ収益機会の提供、権限委譲、技術移転をし、現地の発展をともにすること
・現地で信頼されている人材の活用、バリューチェーンを補完できる組織とのパートナーシップ、現地人材の能力向上などを考慮すること
本書の中では、「Japan」ブランドが途上国で健在であるこの5年が、出遅れた日本企業にとって勝負の時期であると語られている。