経営者の育成は難しい。世の中の名経営者を見ていればわかるが、経営者は「育てる」というよりも、勝手に「育つ」人だからだ。ゆえに本書でも、経営者の育成方法(後半に若干触れているが)を解説するというよりも、経営者のコンピテンシーとして、「勇気」とか「インサイト」とか「しつこさ」などを紹介するに止まっている。
それぞれのコンピテンシーについては、いまひとつ掘り下げが不足している。例えば、「しつこさ」という項目については、一般的な事例や経営者(柳井さんとか鈴木さんとか)の言葉を紹介するなどして、「経営者に必要はしつこさとは○○ということである」と上手くまとめているが、彼らがどのような経緯を経て“しつこさ”を獲得したのか、しつこい人としつこくない人とは先天的・後天的にどこが違うのかなど、突っ込んだ掘り下げが足りないのである。読者が知りたいのはその部分なのだが。
後半に「スキルセットの習得方法」についての記述があるが、ここでは、コンサルタントとしての筆者の能力開発方法が例として示されているのだが、これは本書の趣旨としてはズレていると思う。なぜならば、読者はコンサルタントの育成ではなくて、経営者の育成方法を知りたくて本書を購入しているのだから、全ての事例は経営者に関するテーマに集約されるべきである。
また、アート系スキルの重要性を主張している割には、所々でBCG流のマトリクスが出てきたりして、なんというか総花的な印象があるのだ。ただ、テーマ自体は重要性があるし、そこに果敢にチャレンジした著者には敬意を表したい。