柄谷の本を読むのは これが初めてである。
本書は著者が1990−1993年に行った講演、インタビュー、論文を集めたものだ。約20年後の2010年に読むと 著者の予見性が良く分かる。
一点目。著者はソ連亡きあとに 西洋諸国がイスラムという敵を見出したと述べている。これは湾岸戦争を踏まえた見解だが 湾岸戦争の段階では イスラムというものが全面に出ていた記憶は少ない。2001年の9.11という事態があって初めて イスラムというものが大きく語られ始めたと考える。その意味では 著者は 9.11を予見していたと考えるべきだ。
二点目。著者は 資本主義の暴走と その結果の社会民主主義の勃興を語っている。これはまさに2008年のリーマンショックと その後の世界の対応そのものだ。著者が書いた1990年代前半は まだ 小泉内閣の新自由主義すら想像されえない段階であったことを考えると この予見性の鋭さには驚くしかない。
しかし こう書いていると 改めて 21世紀初頭の10年間は 9.11とリーマンショックという二つの大きな事件に象徴されたと感じる。その二つを 10年前の まさしく「戦前」に 予見している本書は 今なお 読んでいて刺激的だ。