TVでの的確な意見でおなじみの著者の好著。
確かに「中東」と一口に括るのは難しいので、著者はひどく謙遜をしているが改めて参考になる事項が多々ある。
例えば、ドバイの狂気のような土地開発ブームは9.11事件の後のオイルダラーの流れの変化が原因など。
冷戦時代の力関係の利用から、イスラム原理主義の台頭などの説明も参考になる。
「冷戦のゴミ」問題は果たして解決できるのか重い問題である。
「民主化が進むとイスラーム主義が強まる」のはなぜか?などはニュースの裏側を理解するためにも有益。
日本に適用すれば「政権交代が実現すると、なぜ・・・・・」に置き換えられる。
イスラム教下での女性の苦悩の具体例としてはアヤーン・ヒルシ・アリ「もう、服従しない」、シリン・エバディ「私は逃げない」などがある。
いっぽう、部族長に仁義を切ると、見ず知らずの旅人にも実に親切にする例をローリー・スチュワート「戦禍のアフガニスタンを犬を連れて歩く」などで読むと非常に理解の難しい世界であることが判る。
ボストンでのパーティで「日本と中国はどう違うの?」「スエーデンとノルウエーの違い程度よ」という会話を耳にしたことがあるが、この世界の理解はまことに難しい。
イランでの日イ大型石油化学計画が革命で暗礁に乗り上げた際に、「ホメイニなんてすぐ暗殺されて一件落着さ」と冷笑していた傲慢な日本側プロジェクト担当者や、「高速道路も作ってやったのに、どうして反米なのだ」といぶかっていた米国学生など、我々はいかに無知で無神経であることを痛感させられる書物である。