最近42巻で終了した大大河ドラマ.序盤は京都の武専剣道部で活躍する話が中心で,スポコンものかと思わせるものの,実業家の叔父の存在などの伏線が期待させるとおり,その後は大陸へ雄飛し全く異なる展開を見せる.昭和初期から終戦までの時代背景を縦糸に,時代に翻弄されるというよりは,時代を強引に切り裂いてゆく主人公の生き方が印象的だ.主人公やそれを取り巻く女達は,非現実的なほど理想化された人物で,いささか読者をしらけさせる危険もあるが,著者特有の史実を丹念に調べて物語に織り込んでゆく手法により,一種のリアリティを与えることに成功しているのは見事である.序盤は,ひやひやさせられる部分もあるが,後半は,非文明的な中国の現状や共産党などの描写などにおいて,よりリアリティのある表現に評価できる.
なかでも,満州国の場面で重要な役割を演じる甘粕元大尉に対する好意的な描き方は印象的だ.石原莞爾など実在の人物のほか,映画『覇王別姫』からの引用や,満映の女流映画監督,などなど,さまざまなモチーフがちりばめられており,それぞれにモデルが存在すると思われるが,評者にはとてもその全てを語ることができない.この時代の背景に詳しい読者なら,それらのルーツを想像しながら読むという楽しみも十分できるだろう.