兄が妹に電話をかけるシーンの描写など、非常にテンポが良く、映像を喚起する。そういう意味ではとても現代的な作家だと思った。
ミスリードの仕方も、途中でくらりと錯覚が解けるあたりまでは秀逸だった。
ただ、ある人物の造形が極端すぎ、文庫本の解説を読むにこれはメタファーだというのだが、それにしてもあまりに常軌を逸しすぎていて、その動機もそんな人間になってしまったという経緯の説明もないままなので、どうにもご都合主義に映る。
どんな極端なことを言ってもしても、その人物はそういう人物だから、ということで片付けられてしまってはズルいと思うのだが。
クライマックスのシーンも、どこかで見たような展開で、決着のつき方も容易に想像できてしまった。
そういう点がちょっと残念だった。
後は、ラジオのニュースなど、想像の余地を残す終わり方で面白いと思った。
解説を読んでから、それをもとに読み直すのもまた一興かも。