20章からなる物語。
表紙は林喜美子画伯。各章の最初のページには薄い影絵のような挿絵がある。わずかに茶色がかった?インクでクッキリと印字された文章は気持ちよく読めます。
時代は鎌倉幕府が開かれてから70年ほど後の頃。九州の博多から父と共に旅立った8才の主人公「太郎」は中国に渡り「希龍」と名乗る。宋王朝の崩壊を経て、元王朝が成立してしばらく経つ頃まで、希龍36才までの波瀾万丈の物語です。厳しい修行の日々が前半3分の一を占めます。その後は元の侵攻に騒然とする世相の中での過酷な旅、様々な出会いや、戦いの中、志半ばで死んでいく人々の姿も描かれており、単純な児童向け小説の域を超えています。
父に捨てられたと思い泣きながら土にまみれて働く内、次第に陶工という仕事の素晴らしさに魅せられていく希龍。人間としてしっかりと自立していく主人公の姿が見られます。舞台は中国、歴史上の人物も多数登場しますが、語られる「言葉」も味わい深いものがあります。特に目立つのが「仕事」や「人生」にまつわるもの。地に足の付いた人間の言葉、力強い言葉があちこちにあって素晴らしい!
児童向けの読み物で「焼き物」に関するものと言えばリンダ・スーパークの「モギ―ちいさな焼きもの師」が 思い浮かびますが、この本は焼き物に関する事でも更に本格的な内容です。陶土に魅せられ、焼き物に魅せられ、自然と、命の輝きに魅せられていく希龍の姿が 感動的です。
「龍の腹」という書名の説明は目に付かなかったのですが、幼いときは泣きながら、成長してからは自らを鼓舞するように語りかけた登り窯のこと であり、希龍自身のことでもあるのでしょうね・・・。懸命に生きることの素晴らしさを感じさせてくれます!児童書ではありますが、本格的な大河小説という雰囲気で大人も楽しめますよ!