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龍のかぎ爪 康生(上) (岩波現代文庫)
 
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龍のかぎ爪 康生(上) (岩波現代文庫) [文庫]

ジョン・バイロン , ロバート・パック , 田畑 暁生
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

数十年にわたって毛沢東のために「汚れ仕事」を務めた、中国共産主義の暗黒面を象徴する「悪の天才」康生(1898-1975)。彼は上海で暗殺団を率い、延安で粛清工作に携わり、文化大革命の采配をふるい、多くの人々の処刑、投獄、拷問を取りしきった。今日まで残る「抑圧と管理のシステム」の創設者の肖像を未公刊資料を基に描き出す。岩波現代文庫オリジナル版。(解説=田畑光永)(全2冊)

内容(「BOOK」データベースより)

数十年にわたって毛沢東の「かぎ爪」となって「汚れ仕事」を務めた、中国共産主義の暗黒面を象徴する「悪の天才」康生(一八九八‐一九七五)。上巻では、故郷山東省での少年期、上海で軍閥、国民党と死闘を繰り広げた青年期、ソ連に渡り中国人共産主義者を粛清し、帰国後毛沢東に取り入り延安整風運動の中で様々の恐怖をつくり出し、冷酷に残虐行為を駆使して党内で高位に昇っていく壮年期の姿を、未公刊資料を基に描き出す。

登録情報

  • 文庫: 368ページ
  • 出版社: 岩波書店 (2011/12/17)
  • ISBN-10: 4006032358
  • ISBN-13: 978-4006032357
  • 発売日: 2011/12/17
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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「中国のべリヤ」と云われた康生(1898−1975)の伝記です。そのベリヤ(1899−1953)については、スターリンがリッベントロップに「うちのヒムラー(1900−1945)」と紹介したそうですから、康生は、20世紀の三大独裁国家の「暴力装置」である秘密警察の、三大長官のうちの一人、ということになります。
ヒムラーは、ナチス敗戦のどさくさの中で自殺。ベリヤは、スターリン死後の権力闘争に敗れて刑死。しかし康生は、毛沢東死去前の文革末期に、権力を維持したまま病死しました。死後数年経ってからの四人組裁判で処断されましたが、生前にはその権力が揺らぐことはありませんでしたし、康生が毛沢東死去後も生きていれば、権力を失うことも無く、その後の中国の歴史も、今とは大きく変わっていた可能性すらあります。つまり、世の怨嗟を買う「闇の権力者」としては、珍しく天寿を全うできた、幸福な人生だったわけです。
康生は、20世紀の共産主義体制の、血なまぐさい部分の全てに、何らかの形で関わってきました。1920年代の上海を舞台に、蒋介石派とのテロ合戦を指揮。1930年代後半にはソ連にわたり、スターリンの大粛清下での同胞迫害に積極的に関わり、1940年代前半は、延安での「整風」という名の毛沢東体制確立に向けた反対派粛清を主導。1940年代後半には、故郷である山東省での土地解放を指導し、康生自身も富裕層出身ながら、そんなことはお構いなしに地主階級を苛酷に弾圧。1950年代前半の朝鮮戦争期には、入院と称して隠遁しましたが、50年代後半からは復帰して、反右派闘争、文革と、毛沢東体制下での数々の民衆弾圧、指導部内での権力闘争に、主導的に関わっていきます。また外交面にも口を出し、カンボジアのクメールルージュを支援します。
これだけの人物ですから、この本が面白くないはずがありません。一人のインテリが、蒋介石派による弾圧下、スターリン体制のソ連・毛沢東体制の中国という二大圧政下で、どのように勝ち馬を見分け、それまで仕えてきた権力者や友好関係にあった同志を裏切り、新しい権力者にすり寄り、その下でどのように身を処して生き延びていったのか。究極のサバイバルです。この本は、「中国現代史」、「現代版の三国志」としてだけではなく、サラリーマン諸氏にとっては「組織内サバイバル指南書」としても、大いに参考になるでしょう。血なまぐさい「島耕作」といったところでしょうか。
さて、康生の人物像ですが、これが意外なことに、荒々しさを剥き出しにした権力欲の権化というよりも、物静かな学者肌の人物だったそうです。書家としては相当な腕前で、美術品への審美眼も専門家並みだったとか。機を見るに敏な、権謀術策に長けた学者、すなわち「白い巨塔」に出てくる教授のような人物、というイメージが適当なのではないでしょうか。
この前、「スターリン―赤い皇帝と廷臣たち」(白水社)というのを読んで、ベリヤという人物からは、実業界で出世しそうな社内官僚、という印象を受けました。一方で、ナチス関係の本を読んでみると、ヒムラーというのは、極めて優秀な官僚という印象を持ちます。
ちょっと待ってください。「権謀術策に長けた学者」、「実業界で出世しそうな社内官僚」、「優秀な官僚」、こういう類の人たちが一堂に会している場所が、日本にもあるではありませんか。そう、ナントカ村です。
康生もベリヤもヒムラーも、日本で生まれていれば、ナントカ村にピタリと納まり、嘘八百の「神話」作りに邁進し、反対意見は黙殺し、テメエらに都合の悪い警告を発する学者は排斥するか蛇の生殺し状態に置き、何かが起きれば今度はシレ〜ッとだんまりを決め込み、責任も取らずにぬけぬけと退職金を受け取り、ノホホンと長生きしたことでしょう。もちろん、歴史に名前は残りませんし、誰もこんな伝記を書いてはくれませんが。
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ジョン・バイロン/ロバート・パック(田畑暁生訳)
『龍のかぎ爪 康生(上・下)』(2011/1992原著)を読む。
魔力のある本である。

中国現代史の暗黒面を
毛沢東の背後で一手に引き受けた感のある男、それが康生だ。
1975年、77歳で死去したとき、
毛沢東、周恩来に次ぎ中国共産党序列三位、副主席であった。
その名は意外なほど知られていない。

康生は権力を手に入れるために謀略の限りを尽くす。
事実捏造、自白強要、拷問、処刑、裏切り、略奪。
すべてモスクワ仕込みである。
農民、軍人出身の政治家が多数を占める中国共産党で
康生は知的で洒落者で芸術を愛する高級官僚であった。
書と画の腕前も知られている。
いまでもすべての謎が解明しきれていない文化大革命の、
最初の火付け役を背後であやつったのも康生である。

もし彼が病に冒されず、
毛主席の死後、最高権力者の座を手に入れていたとしたら……?
歴史ではタブーの「もし」を僕は考える。
おそらく中国、日本、東アジア、そして世界は
いまの構造、パワーバランスとは異なるものになっていたろう。
田畑光永(現代中国研究者)が解説の最後で
現代の中国共産党についてこう書いている。

   党内における権力の不透明性、
   党外の反権力に対する躊躇なしの実力行使、
   いずれも康生の育てた土壌である。

                   (p.302)

死後5年で党籍剥奪、反革命集団の主犯。
現代中国の権力者たちは康生を遠い過去の遺物にしようとしている。
しかし「民権」に関する限り、
中国の暗黒面は変わっていないと田畑光永は指摘する。

本書は訳者・田畑暁生が大学院生のとき
出版のあてもないまま翻訳した原稿が元になっている。
それからおよそ20年後、
岩波書店編集部・林建朗が出版を実現した。
原著者二人とも連絡を密にして日本語版に仕上げた労作である。
文献一覧、書誌、人物注解、康生年譜、
事項・人名索引がきわめて充実している。
中国現代史の理解を深めるために必読の書である。

原題は、

   THE CLAWS OF THE DRAGON
   Kang Sheng, the Evil Genius behind Mao
   and His Legacy of Terror in People's China, 1992
   by John Byron and Robert Pack

Dragonは毛沢東であり、
Claws=かぎ爪は毛の汚れ役を引き受けた康生である。
「康生、毛の影にいた悪の天才、人民中国における恐怖の伝説」。
副題が内容を簡潔に要約している。
本書は僕が信頼している書評家のひとり、
坪内祐三のコラム「文庫本を狙え!」(『週刊文春』連載)で知った。

(文中敬称略)
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