「暴落」「受難」「鼻」の短編三本収録。
「暴落」は個々人が株式上場して、家庭、学歴、職歴、日頃の行い、また友人の
秀劣などが株価を、つまりそに人間の価値を決める社会の話。これはそのまま
「世にも奇妙な物語」の脚本としてありそうです。割とオーソドックスな流れで
はありますがグロテスクかつドライなラストが印象的です。
「受難」は映画「SAW」に酷似したシチュエーションを用いながらオリジナリティ
あるスリラーになっています。ある場所から身動きできなくなった主人公の元に
集まる三人の人物がそれぞれおもしろい。主人公にとって救世主になりうる彼ら
がみんな曲者で、全く役に立ちません。ほとんどコメディーのようなやり取りが
返って歯がゆさと憔悴感を際立たせています。
受賞作「鼻」は先の二作とは全然異なる毛色の叙述モノ。叙述モノと書いた時点
で半分ネタばれみたいなもんですが、単純に読者をひらりとかわすオチだったら
掃いて捨てるほどあります。おそらく読んでまず眉をひそめ、あるいは読みなが
らオチが読めそうなのに眉をひそめ、それからどどどどっとこの恐怖の意味がわ
かるような、そんなおいしい(二度読みできる)お話です。
雰囲気の異なる三つの短編はそれぞれレベルが高く、一気に読めてしまうのでお
すすめです。