気鋭・森村誠一が挑む怪奇ミステリー。元々は『闇の奥に火が見える』という題名で連載されていたものを著者が加筆して改名した作品。著者は
本書においてオカルティズムとは相容れない現実性を表現する事に試みたそうだが、それが見事に嵌っています。
まずオドロオドロしさと、リアルに艶かしい対照が際立つ導入部の妙。両親に深夜密林に連れて行かれ黒ミサの洗礼を受ける少女時分の記憶を
持つ女性と、歪形した欲望でハント(強姦)を行う三人の若者達の描写。まずつかみは抜群。
そして起こる、殺人事件。殺されたのは強姦された被害者。だが強姦はしたが殺した覚えだけはないぞ(?)。残虐な手口に怒れる愛甲刑事達が
立ち向かう。ここで上述の現実性が生きてくる。立場も価値観も異なる刑事達の人間ドラマを見事に描いていて読み応えあり。
そして、ミステリーには欠かせない密室殺人。第二の現場は、密閉された別荘。そして、捜査本部が犯人の目星をつけていたところで、それを
覆すようにして起こる第三の殺人と、きっちりサスペンスを引っ張る。
そして本書の底流を流れる重要要素として、国際神秘学会なる邪教めいた集団の存在がある。彼らの目的とは一体何か(?)。本書はどちらかと
言うと、サスペンスと不可思議さで読ませる小説であって、本格的に謎解きを愉しみたい人向けではありません。だが、最後になってようやく
明かされる真意には驚倒ものです。考えてみれば主要人物が執る不可思議な行動にはその動機しか存在しないのだ。。あまりに現実的な動機。
別レビュアーさんの批判は最もで、確かに安直で判りやすい人間関係だが、それが反って奇妙にリンクする怪奇性を盛り上げるとも云えます。
現実を突き詰めれば、エゴを突き詰めれば、それ自体がオカルティズム然として見えてくる。。そこが面白さですね。仕事、宗教、時代性など
様々な構成要素が最終的には一つの現実(オカルティズム)になる。