銀座を舞台にした“逆・細うで繁盛記”。「銀座」「立身出世」「男たちの欲望」「女同士の確執」等々、大衆受けしそうなアイテムを駆使しつつも、そこは松本清張のこと、当り前のサクセス・ストーリーになるはずがありません。「悪女小説」的な前半から、後半の意外性に満ちた物語展開(僕はカトリーヌ・アルレーの『わらの女』を連想しました)で読ませます。リーダビリティの高さは、著者の数ある長編の中でも上位にランクできるのではないでしょうか。
尾崎秀樹は本書の解説の中で「ミステリーではない」と明言しています。確かに謎に満ちた殺人事件が起きる訳ではないのですが、ヒロイン元子がのし上がっていく過程はスリリングですし、後半、彼女に対して張り巡らされた罠の巧妙さ、大胆さは、ミステリならではの面白さが満喫できます。それにしても、著者のヒロインを追い詰めていくやり方は、半端じゃないですね。ラストの落ちも、ここまでくると怪談です。
著者の後期作品の中で、特に人気が高いのも頷ける出来栄え。サスペンス小説の面白さに満ちた佳作です。