題材自体、センセーショナルでインモラルでグロテスクだけど、それをどうしてここまでロマンチックに描けるのか、不思議でしょうがない。
狂った世界。
その屋敷のおくつき、重い扉がまた一枚開き、また一歩奥に踏み込んでしまった。
ディミトリが大正時代の日本に流れ着き巣を作り始めるエピソードが、和泉小路伯爵令嬢彰子の日記をアリスが読むことで明らかになる。
マクシミリアンとの別れはリピート。
それと見事にリンクして、現世におけるレオの繁殖結果が明らかに。
ぞくぞくしてドキドキしてぞっとしてキュンとして、とにかく刺激的な巻…いや、毎回か。
月夜の雑木林。
繁殖の瞬間の描写はまさに、美しさと醜さの究極の共存という趣で、苦手な方は無理かもしれない。
一巻の冒頭をリアルにミクロに描いたシーン。
確実に夢にみる。
永遠の別れを告げた想い人と思いがけず再会できたとしたら?それは最高のサプライズ。
著者前書きに、いつのまにか創作という作業を「人に見せるもの」と「自分一人の楽しみ」に分けていて、この作品は両方の要素を備えているとあった。
著者がこの精緻な悪夢のような世界観を独り占めせず世に解放してくれた幸運を噛み締めつつ次巻を待ちたい。