やや話題になることが少ない蝦夷の歴史をロシア帝国、幕府と松前藩、そしてアイヌの関係から解説したちょっと変わった視点の著書です。エカチェリーナからニコライ1世治世のロシア政治情勢に揺れ動く対日交易政策、対する幕府の綿々と現在に続く金科玉条的硬直性など、直ぐに訪れる黒船と日米関係を彷彿とさせる対処方法、同松前藩に対する幕府の見方(セカンドシチズン的視点)など当時の記録などから垣間見えます。そしてアイヌと松前藩の関わり合い。他国・他地域との相違点は、関係者いずれも経済関係、交易的動機がほとんどと言うことでしょうか。領土的な、いわゆる帝国主義的動機、そしてキリスト教伝導目的が希薄なようです。やはりそこは気候、地勢的要因が影響しているようです。この本は2008年から1年余りの熊本日日新聞の連載が元になっていますが、三国志と言うよりあくまで日本の記録からの視点が中心になっています。アイヌ側の記録がほとんど得られない事情はやむを得ません(元々人口が少ないところに減少せざるを得なかった過程などは、アメリカインディアンの歴史と重なって見えてしまいます)。ロシア側の記録も限定されています。ラクスマン、レザーノフ、ゴローヴニン辺りになると流石に日本側資料が充実しており、その落差が少し残念です。繰り返しですが、意外な方向から論じた面白い本です。