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最も参考になったカスタマーレビュー
36 人中、27人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 2.0
小林信彦衰えたり,
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レビュー対象商品: 黒澤明という時代 (単行本)
黒澤フリークスというより、「黒澤論」フリークスである僕。新刊でちょっとでも黒澤とタイトル名がつくものが出れば迷わず購入している。 で、週刊文春で小林信彦氏が発売を予告していたこの本もすぐに購入し、先日わくわくしながら読み始めた。 なにしろ「あの」小林信彦が書いた黒澤論だ。 「あの」というのは、これまで彼の書いた過去の評伝モノは、確実に面白かったからである。 小説でも「ぼくたちの好きな戦争」がなかなかのものだったが、「天才伝説 横山やすし」「おかしな男 渥美清」などの芸人の評伝モノに独特の切れ味を見せる人だ。芸人たちとの彼自身の私的なエピソードを交えて書かれているので、どれも飽きずに読める。 しかし。 結論から申し上げると、この本には失望した。 タイトルからも伺えるように、リアルタイムで観てきた黒澤映画を、その時々の「時代」とリンクさせて 論じていくのだが、どれも切り口としてはご本人が思っているほどに斬新なものではない。 堀川弘通氏の「評伝 黒澤明」をベースにしたと断っているが、ベースにしたどころではなく、エピソードの材料はほとんどがそれだけ。禁欲的に論じたい気持ちはわかるが、それぞれの作品評価の根拠が圧倒的に不足している。堀川氏の評伝はいい本だと思うが、だからといってそれだけに依拠しなければならないほどに映画を知らない氏でもあるまい。これでは聞いたことのある断片的なエピソードの引用が脈絡なく並んでいるだけだ。 また「リアルタイムに観た」ということだけでは、いくら「時代論」の目線を入れたといっても説得力に乏しい 「姿三四郎」初見時の少年たちの時代の空気だけは確かに面白い。通読して感じたが、たぶん作者はこれを書きたくて書き始め、それをすべての作品論に広げていけると思ったのではないか。 しかし氏自身が気づいているように、黒澤が本当の意味で時代とともに息づいていたのは、「野良犬」ぐらいまでなので(百歩譲って「7人の侍」までか)、どだいその手法には無理があるといわざるを得ない。「時代性」が消えた後期作品に近づくにつれて、どんどんステレオタイプな個人の「印象批評」になっていくのである。 ・・・ 小林氏は大御所なので少々遠慮なく、かつ偉そうに書かせていただくと、実は彼の近年の筆力の低下は目に余るものがあった。(自分が文章力などをいえた立場でないことを前提に言ってるのだが。。。) 僕は彼の週刊文春のエッセイが好きで常に愛読してきた。自分のブログの文体でもたまに借用させていただいたこともあるほどである。 しかし、なぜかここ数年、ガクッという感じで面白くなくなった。 内容もそうだが、あの独特の洒脱なリズムが消え、愚痴っぽい老人の「言葉の羅列」に堕しているのである。 そのことが今回の黒澤論の文章にもよく現れており、「横山」や「渥美」を論じた筆の冴えはもはやない。 厳しい評価を書かざるをえなかったが、黒澤を愛し、かつての小林氏のエッセイを愛したものだからこそ記しました。
16 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
読んで悔い無し,
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レビュー対象商品: 黒澤明という時代 (単行本)
自分には面白く読めました。本書は、かつて日本の喜劇人を論じ、志ん朝や渥美清や横山やすしを論じ、 TVの“黄金時代”を論じ、また、アメリカ文化をずっと注視してきた小林信彦が、 黒澤映画全作の同時代人(本書に拠れば、黒澤の初監督作品「姿三四郎」を 封切り直後観たのは国民学校4年のときとか)として、黒澤映画全作について、 年代順に昭和の世相や御自身の半生のスケッチを交えて描いたもの。 コアな黒澤ファンにとっては自明の情報や逸話もあるかも知れませんが、 本書は結局、小林信彦という作家の語り口が身上。 小林ならではの、先行する黒澤論(堀川弘通、佐藤忠男、荻昌弘等々) からの引用もまた然り。 黒澤映画に何を求めるかで、作品の評価が全く変わるように、 小林信彦に何を求めるかで、本書の評価も変わるでしょう。 小林さんが今、これを書きたかった気持ちは最後まで読めば分かるし、 それだけに、本書を読んで良かったと思います。
12 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
まさに同時代者からの表現,
By 鏡餅 (千葉県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 黒澤明という時代 (単行本)
リアルタイムで(名画座やビデオなどではなく封切り劇場で)黒澤作品を見てきた人で、確かな鑑賞眼と表現力を備え持った貴重な存在が、この筆者でしょう。映画はもちろん、演劇、テレビなど、メディアやジャンルを問わず「エンタテイメント」全般を観察してきた人による、「(虚実入り混じった)巨匠伝説」や「作品外部のゴシップ」、「権威(アカデミー賞やカンヌの受賞)の箔による無根拠な高評価・その反動としての否定」などの挟雑物を排した、純粋な作品レビューです。 それだけでも貴重ですが、各作品の見どころや、逆に物足りない部分を押しつけがましくない程度に解説し、言われると「なるほど」と思わされるところがたくさんあります。また、サラリと書いてはありますが、封切りの日付や系列、あるいはプロデューサーやスタッフに関する記述などは、おそらく様々な記録を渉猟し、自分の中での確かな記録・記憶も援用して精確が期されていて、筆者らしい完璧主義ぶりが発揮されています。 平明で読みやすい文章ですが、おそらくはかなり手間ひまをかけたものでしょう。 トリビア的なネタなら、Webで簡単に見つかります、いくらでも。 本書は専門的な解説をしてくれたり、関係者的な裏話的エピソードを耳打ちしてくれるような本ではありません。が、「観客として」の視点から作品を評価し、それが独善に陥っていない、文章も達意な映画評論というのは、現在では稀有です。この著者の書籍、わりと絶版になってしまったりすることが多いので(古書では比較的手に入れやすいですが)、とりあえず速攻で買いました。
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