他のレビュワーの皆さんがおっしゃるように、短いルポが連なった作品なので読みやすいです。アタマから読まなきゃいけない、という制約はありません。ちょっとずつ前後と関係してることもありますが、基本は読み切りルポ。気づいたら全部読み終わっていることでしょう。
本書が取り上げているのは、ガーナ、タンザニア、ウガンダ、ナイジェリア、モーリタニア、エチオピア、ルワンダ、スーダン、ソマリア、セネガル、リベリア、カメルーン、セネガル、マリ、エリトリア、です。南アは大国ですが登場せず、ジンバブエのように有名な崩壊国家にも残念ながら触れられていません。僕はアンゴラや民主コンゴ共和国について読みたかったのですが、これらも出てきませんでした。包括的にアフリカについて書かれたルポではないのです。
しかし収録されたルポはいずれも秀逸です。ルワンダ虐殺の構造を解析した「ルワンダ講義」は、虐殺について詳細に書かれた多くの単著よりもルワンダの政治・社会状況がわかりやすく書かれています。フツ族=農民カースト、ツチ族=牧畜民カースト、であり、両者は民族的にはまったく変わらない、という説明(これが完全に妥当なのかもわかりませんが)やフランスが介入した事情はこれまで読んできたもののうち最も理解を促されました。また、虐殺に際してのヒューマニスティック・ドラマチックな挿話に一切触れていないストイックさも良いです(ドラマチックな挿話を入れれば読者受けは絶対するでしょうに、自制しているんですね)。
本書でとくに良いと思ったルポは、「氏族(クラン)の構造(ガーナ編)」「氷の山のなかで(ウガンダ編)」これはアフリカの宿痾・マラリアを理解する短いけど必読の文献です、「アミン(ウガンダ編)」「夜の黒き結晶(ブラック・クリスタル)(ウガンダ編)」これもアフリカの必須科目・呪術についてのすばらしい文献です、「闇の中で立ち上がる(エチオピア編)」「冷たき地獄(リベリア編)」などなど。
ポーランド人の著者は自分も第三世界の人間だ、だけど白人だ、というスタンスでアフリカの人々と対峙します。僕みたいな無自覚な日本人はどうしても上から目線でしかアフリカに向き合えませんが、本書のような優秀なルポルタージュを読めば労せずして異なる視点を借りることができるわけで、こんなに素晴らしい体験はないと思います。
ただ、アフリカは激動しており、本書は五十年前から書き溜められたエッセイで最新のものでも90年代の作、というハンデはどうしようもありません。面白く、読みやすい、かつ優れたアフリカについての読み物は今の日本の出版界ではなかなか出せないでしょう。読者の一人として、支えていきたいと思います。
ちなみに最近手に取った中では、幻冬舎新書『アフリカ大陸一周ツアー』がなかなか良かったです。Amazonの批判的なレビューも併せて読むとなお良いでしょう。
アフリカ大陸一周ツアー―大型トラックバスで26カ国を行く (幻冬舎新書)