池波正太郎は短編の名手で、どれも短いがために行間に込められるものも多く、
味わいが深い作品だと思う。
一方で、池波は長編の名作も残しているわけだけど、その長編の、ちょうど裏
舞台と言うか、別の視点で味付けしてくれるようなそんな風にも取れる短編が
ある。
今回の作品で言えば、「獅子の眠り」は90歳をこえてなおかくしゃくとして
幕府の横暴に立ち向かった真田信之を熱かった名作「獅子」を、おぎなうこと
しきり。これ自体としてももちろん面白いが、「獅子」を合わせ読むと更にい
い。
同様に、最後に収められている「開花散髪どころ」も、幕末の剣士薩摩の人斬
り半次郎を直接扱っていないにも関わらず、半次郎(後の桐野利秋)の非常に
人間的な側面を描くものとして、やはり池波の「人斬り半次郎」と合わせ読む
と面白い。
全体に、話が暗くならず、ホッとする色合いのものが多く、お薦めの短編集で
す。