期待以上でした。ファン心理を差し引いても充分素晴らしい
サントラだと思います。音楽的な幅がすごく広いのにどの曲も
中途半端なものではなく本物で、大人にこそ聴いてもらわないと
もったいないです。
M・ナイマンのような「執事たるもの」や英国の曇り空を思わせる
「The butler」「裏社会の秩序」で映像を思い出して引き込まれ、
打って変わってプリミティヴで呪術的な「The coffin man」に
ちょっとびっくり。
「The faint smile」「Jazzin'」なんてジャズなのにチェンバロが
乗っててイカしてます。
そしていよいよ「The dark crow smiles」、劇中でも「おおっ?」と
胸高鳴らせた悪魔降臨のテーマですがやはり目茶苦茶カッコいい。
こんなインダストリアルな音にミサ曲かぶせるなんて!
それにこの有無を言わせぬ感じのストリングスとホーン。
重く、深く、猥雑で荘厳。
ワタシもうNINもミニストリーも要らないですだ!
中盤呆れるほど様々な音楽的要素がカオティックに渦巻く(悪魔だから
何でもアリなのか?)のに、芯を崩さずあくまでクールに端正に主題に
収束してゆくあたりは、さながら空を駆け回る悪魔のゆるぎなく静かな
着地のよう。完璧です…。 契約、するわそりゃ。
それからシエルのテーマ「Si deus me relinquit」、
劇中で歌だけ耳にした時はあまりに儚げで泣きが強すぎて
好きじゃないと思っていたのですが、ちゃんと通して聴くと
とんでもない。
耳からウロコです。そう来るか!と息を飲みました。
短い歌詞で語られるのはシエルの心の一部だけなのに、
全体の展開が何よりも雄弁に物語の核を描き切っているでは
ありませんか。あの時地獄の底まで突き落とされたシエルが
悪魔を呼び一体となるさまとその必然が、音楽だけで余すところ
なく描かれているのです。圧巻。
終盤オーケストラが主題を奏でるくだりでは、契約を結んだシエルが
悪魔に抱えられて空を飛び生還する情景がありありと浮かびます。
その決意、逃れられない彼らの絶対の絆。
哀しく、厳かで、胸をかきむしるほど美しい。
他の曲もみな素敵ですが、私はこの2曲を聴けただけでも幸せです。
こうまで黒執事を解りぬいた素晴らしい曲を作って下さった
岩崎琢氏に、感謝してやみません。
そして一流の演奏家と歌い手たち。採算取れるんでしょうか…。
リミックスの「The dark crow smiles」、
甘美なダンスチューンに化けたこちらも素敵です。
80'sのエッセンスでピシピシッとツボを押さえて盛り上がり、
後半ほぼニューロマ。程よいポップさも悪魔の作戦なのか、
普通にかっこよく、フツーに踊れてしまうのが怖い(笑)。
気がついたら自転車乗りながら歌ってましたよ、あの暗鬱な
ミサ曲なのに。悪魔のプレゼンもしっかり入ってるのに。
何だか人の世にさりげなく入り込んでる悪魔みたいな曲。
この悪魔の旋律は少しずつ形を変えながら色んな曲に出てきて、
セバスチャンがいつでもシエルの傍に居ることを暗に語って
いるかのようです。どこまでも心憎い作りです。