物凄い小説である。これだったら、ヒッチコックのサイコや、監督の名は知らないが、ソウ2なんか子供だましのホラーストーリーになってしまう。人間の本当の怖さはこういうものだと思い知らされる。オバマ大統領が見たら怒るかもしれない。このような態度で清張は古代史や美術史や考古学や人類学に臨むのだから、東大の先生なんて、赤子の手を捻るよりやさしいのはわかるような気がする。清張がなぜ高階秀爾なんかを評価しないのか、この小説を読めば十分理解できる。黒地の絵の解釈は絶対彼らにはできない。競争相手にこれではならない。でも民族学や古代史の本質ってこういうものなのかもしれない。描写の中に、さそり座を夏の夜空に見るのがある。天体はこういう時に観察するのだ。ところで話は飛躍するが、オランダの画家・フェルメールは天体観測と絵画の関係をどう見ていたのか。「宇宙に開かれた光の劇場」上野和男・著という本を、この小説を読み終わった後に読むことをお薦めする。フェルメールなら”黒地の絵”を解釈できることがわかるだろう。