少し前に、新聞に載った作者の写真を見る機会があった。元気があふれてくるような顔である。
本当は『タワーリング』という小説にまず注目したのだが、縁があってこちらが先になった。今年4月発行の『タワーリング』が最新作かと思えば、その後2冊の新作が出ている。やはりエネルギッシュである。
読んでみても元気があふれている。文章は簡潔、あっさりしたもので、つまり、言葉の味わいとか陰影とかで勝負する作家ではない(それでも一番最後はなかなか凝っている)。売りは、小気味よいテンポでエピソードを連ねる物語の展開力だろう。
『タワーリング』がそうであるように、主としてクライシスノベルの書き手ということになっていて、災害、事故、犯罪、IT、経済危機などの大きな事件を扱うらしい。そこで面白く読ませるには、何よりスリリングな展開ということになるだろう。どれほど衝撃的な事件でも、ただ描くだけで面白いわけではない。面白さには緊迫感がいる。めまぐるしい変化、魅力的な人物像、謎の連鎖。この小説自体はいわゆるクライシスノベルではないだろうが、そうした基本的な要素はすべて備えているように思う。
見た目は動きが早いアクション主導の物語だが、同時にそれは、たぶんに心理的なドラマでもある。何らかの挫折、あるいは「空洞」を抱えた複数の人物が、それをどう乗り越えるか、というのが基本パタンになっているからだ。時間的空間的背景が、阪神大震災からの復興途上にある神戸周辺というのも興味深い。神戸出身でもある作者が、個人的な祈りをも込めた作品ではないかという気がする。
いずれ『タワーリング』も読むことになりそうだ。ほかに作風に新しい捻りが加わったように言われる『怪物』も面白そうだ。もしかすると新しい作家との幸運な出会いかもしれない。