恩田陸という人の作品は、なんとジャンル分けしづらいことか。ミステリもあればファンタジーもあり、オカルトっぽいものもある。では、この作品はどのジャンルに属するか、と考えると、どのジャンルもふさわしくない気がする。食事をしながら、森を歩きながら、交わす会話。時折、過去を思い出す。ふとわいた疑問を口にして、他のメンバーがそれに応える。そんな調子で時が過ぎていく物語。
上下を通して読み終わって、まず思ったことは、これをもっと若い時に読んでいたら、全く違った感想を持っただろうなあということ。30代になってそれなりに社会での経験も積んで、結婚もして子どももいて、という状況だからこそ、この4人の境遇に自分を重ね合わせてみたりすることもできるのかもしれない。どんな人でも、その人を一言で表すことはできない。この4人もそうだが、人から見た自分と、うちからみた自分は違うし、周りがわかっている自分を必ずしも自分自身がわかっているとは限らない。
「利枝子」「彰彦」「蒔生」「節子」の4部からなるこの小説は、4人がY島で過ごした数日間の物語だが、こんなふうに、普段は考える必要のないことでも、ある時期には正面からぶつかっていかないといけないこともあるのかもしれない。この4人にとっては、それがたまたまY島への旅行という形でやってきた、ということ。そしてそれをくぐり抜けた時、それぞれが手にするのはなんなのか。
読み終わった時に、読んだ人の分だけ感想があるでしょう。ただ、おもしろいとか内容に関する感想だけじゃなくて、自分自身のこともふりかえったり、これからのことを考えてしまうかもしれません。