個人的には蔡明亮の最高傑作は『Hole』だと思っていて、実はヒットした『西瓜』など個人的に受け付けなくて、『ふたつの時、ふたりの時間』以来、あまり熱心な観客じゃなくなっていた。それでこの『黒い眼のオペラ』もDVDで観ました。昔のミンリャンが帰ってきたというか、集大成的な作品というか、やっぱり凄い監督だと痛感させらて、しばらく感動で頭がくらくらしてます。
副題は“I DON'T WANT TO SLEEP ALONE”で、まさしくこれがテーマ。孤独と絶望。でも優しくて、美しいです。映画が良質なものへと還元されること拒み続けるように、ぎりぎりの「リアリズム」の強度だけを汲みとろうとする。でもそれが「寓意」的な、まさしく“黒い瞼の裏”に映し出された夢に還元されていきます。どこかおかしかったりするし、愛しい。お馴染みのリー・カンションはじめ、役者の誰もが台詞なしの素晴らしい演技をしています。
今回の撮影は台湾じゃなくて、故郷のマレーシアということからも、監督自身原点に帰った作風なのかもしれませんね。ただ夜景や、暗闇のリアリティーとか、この映画が今まででいちばん凄いんじゃないか。とにかく最後のシーンは映画史に残る名場面でしょう。泣いた。ほかにも素晴らしいシーンが満載です。是非観て下さい。