大半の人類が消えた地球を襲う侵略者と決死の覚悟で戦うテラ・パトロールの活躍と研究者ラングルを抹殺せんと迫る同胞との対決を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第389巻。本巻の執筆者はシリーズ最大の多作家フォルツです。マスクの男アラスカが異銀河に漂流した地球で200億人の人類消失の謎を追う物語はこれまでフォルツとマールによって書き継がれて来ましたが、ここに来て黒い宇宙船で飛来した侵略者の登場により風雲急を告げ俄然面白くなって来ました。本巻ではフォルツが、マスクの男アラスカが結成した組織テラ・パトロールの面々、北西イングランドで生き延びた女医と3人の男性患者、ノルウェーの町に基地を築く具象クレルマクの補助種族フルクース、テルムの女帝に仕える研究者ラングルと彼の命を狙う研究者のリーダー、と四者それぞれの運命が次第に交差して行く物語を見事に描き分けています。
『黒い異人の謎』ウィリアム・フォルツ著:テラ・パトロールの若者ブラフが手柄を立てようとして黒い異人が築いた基地に単独潜入を試みるが、逆に体内に罠を仕掛けられて帰される。本編ではマスクの男アラスカが活性化するカピンの断片と異人の放射する謎のインパルスに苦しみ、和平交渉も不可能な頑なで不気味な敵に立ち向かうが丸で歯が立たず焦りと絶望感を深めます。『地球外生物たちの決闘』ウィリアム・フォルツ著:研究者ラングルは彼を追う同胞のリーダーs=タルヴィアの存在を察知しテラナーと別れて対決の場所を探す。偶然にも彼が選んだ町に食料調達に来ていた女医のグループと出会った事で双方の運命は劇的に変化するのだった。本編では肝心の対決の展開と結末がやや拍子抜けではありますが、終盤テラナー側に光明の兆しが見えるのが何よりも喜ばしいです。けれど、これまでは悪人だけが滅ぶストーリーだったのが遂に善人の側にも犠牲者が多く出始めた事で、いよいよ今後の戦いの過酷さを予感させます。
本巻の翻訳者、林啓子氏のあとがきは「えっ、まさかローダン作家がノーベル賞受賞?」という僅か一頁の愉快なお話です。具象クレルマクの補助種族フルクースが着々と準備作業を進める不気味な謎の存在‘小陛下’とは何者なのか?テラ・パトロールは圧倒的な劣勢を挽回出来るのか?手に汗握り大いに期待が高まりますが、次巻は再び地球を探すローダンと超越知性体テルムの女帝がその姿を現す物語に戻る様で、本サイクルは途切れ途切れになる事が多く中々に理解するのが大変ですが何とか頭を切り替えてこの二つの局面を追い続けて行きましょう。