このスティーヴ・エリクソン著『黒い時計の旅』は私は10年ほど前の福武書房から刊行されていたのを読んだのだけれど、そのときの強烈な印象、いやインパクトはとても一言では語れない。話の流れは錯綜し、物語(?)にとてつもない奥行きというか立体感とでもいうべきか、とにかく日本の文学では滅多に表現し切れていないものがここにある。
この『黒い時計の旅』を読みながら私がふと思ったのは、まるで誰だかわからない(そう、それは自分かもしれない)脳を切り開いていき、解剖学的にも、心理学的にも、そして精神分析学的にも、その脳の中へ吸い込まれていくような感覚です。抽象的すぎるかもしれませんが、下手にネタ(?)を話してしまうより、読中読後の感覚を理解していただきたくこのようなレヴューと相成りました。白水社から復刊して新書サイズで手に取りやすく、また文字の大きさ等、文句の着けようがないです。